2019年11月1日金曜日

清水清期、得度式










本日、令和元年11月1日の月始総講にあわせて、清水左右治の得度式を執行させていただきました。

この半年間、よく修行に励み、今日を迎えることが出来ました。彼は、一度、鈴江日原上人を御師匠さまとして得度しておりましたが、それを貫くことが出来ず、現在の鈴江ご住職にも、真智奥さまにも、清水御導師にも、ご家族にも、妙現寺のご信者の皆さま、妙深寺でも修行をしましたので教講みなさまにも、いろいろな方にご迷惑をかけて、還俗してしまいました。

その後、英子さんという伴侶を得て、三人の子どもに恵まれ、手に職を付けて、一生懸命働き、法深寺で少なくともご奉公させていただくようになりました。

一昨年の1月29日、清水初子大奥さまが帰寂され、彼と話をするようになりました。いろいろな人生の道があると思いますが、同じ苦労をするなら、罪障消滅の道、積功累徳の道、御法さまに身命を捧げて、御法さまのために生きるべきだと。

英子さんも何も分かりませんし、ギリギリまでいろいろな壁が、本人の心にも、周りの者にも、私にもありましたが、今日を迎えることが出来ました。

仏陀には阿難尊者というお弟子さんがおりました。このお弟子さんは仏弟子の中でもマーラに愛されているという御弟子さんです。マーラというのはいわゆる「魔」です。手塚治虫さんの漫画『ブッダ』では、蛇の形をした、綺麗な女の人の姿をしています。そのマーラがお教化される前の、出家得度する前の、いや出家得度した後も、阿難の耳元でいつもささやきます。

「ほら、もうやめちゃいなよ。ほら、こっちに来なよ。なんだよ、あのブッダって奴は。あんな奴を信じちゃいけないよ。」

いつも、いつも、阿難はこのマーラと戦います。「離れてくれ」「どっかに行け」。それでもマーラはしつこくつきまとう。何度も何度も迷い、挫折しながら、阿難は何とかブッダから離れません。

ブッダはそういう阿難を最も身近に置き、多くのお弟子さんがいる中、最後の旅にも阿難一人だけを連れていきます。

そして、阿難は、お釈迦さま、ブッダの最期を看取ったのでした。

十大弟子の中、阿難は最も身近で仏さまの教えを聞いたとして「多聞第一」「一番多くを聞いた」という称号を付けられています。

アングリマーラという凶暴な者も、お教化をされて御弟子となり、罪障消滅の道を歩みました。一般の人は彼の決意など知りません。彼にいじめられ、彼に裏切られ、傷つけられているから、彼がお坊さんの姿になって歩いているのを見て、ののしり、石を投げ、衣を破ります。

お釈迦さま、ブッダはそんな彼に、かつて自分が犯した罪が返ってきているに過ぎないのだから、忍辱、耐えて、さらに精進するように告げます。この教えを守り、アングリマーラはついに阿羅漢にまで至る。

このことは『アングリマーラ経』という御経にまでなっています。この御経には、ブッダの教えを守ったアングリマーラが、放逸(欲望のまま好き勝手にする)、悪業(悪い行いを繰り返す)、殺生(生き物を殺す)から離れることができた自分を喜び、歓喜している姿が描かれています。

左右治は、心根の優しい、真面目な人間です。しかし、だからこそ不器用で、弱く、心に溜め込んでしまう。

なぜか「阿難」と重なりました。いっそ僧名を「清難」にしようと思いましたが、選ばせていただいて「清期(せいき)」と名付けさせていただきました。

「期」というのは「約束」という意味です。人生の期間を表す言葉でもあります。今生人界の約束を果たせる教務となってもらいたい。

高祖、如説修行抄に。
「一期をすぐる事程なし何に強敵かさなるとも、努努退く心なく、恐るる心なかれ。

清水清期師が最初に拝読させていただいた御法門、御教歌。

「法の為 身をくるしめて謗法の 罪を滅すと常によろこべ」

無始已来の謗法、罪障、知らずはからずのご不敬、懈怠、謗法、罪障を、消滅させていただかなければなりません。消滅できなければ、現証の御利益もなく、未来寂光参拝も御座いません。

罪障消滅の道とは、三毒強盛の、欲深く、心根の弱い私たちにとって簡単な道ではありません。

その道は、つらく、くるしく、険しい道で御座います。しかし、苦しい、つらいと思ったその瞬間こそが、謗法の恐ろしい罪障が消滅している瞬間です。
御法さまのために身命を捧げ、つらい、苦しいと思うたびごとに、「罪障が消滅できているのだ」と喜んで励みなさい、とお示しです。

佛立開導日扇聖人の御指南に。

「娑婆の栄華はしばしの夢。又御法の御為なれば、いやな、こわい、くるしきめにあふとても、これもしばしの夢ぞかし。其くるしきめを見るが、このたび仏になる種をそだつるもとでに候ぞや。」開導要訣(八)

娑婆世界の栄耀栄華、楽しいこと、面白いことも、少しの間の夢に過ぎません。
同じように、ご奉公の中で、イヤな、怖い、苦しいことがあったとしても、それも少しの間の夢に過ぎません。その苦しいことの中に、今回の一生で、仏になる種があり、それを育てる因があります。

謗法、罪障の深い凡夫ではありますが、人と生まれ、御法さまにお出値いさせていただくことが出来ました。

もう二度と後悔しないように、苦しく、つらくとも、罪障消滅を誓い、罪障消滅の道を歩み、御法さまの御為に、迷わず、踏み外さず、つねづねに喜び、信行ご奉公に精進することが大事大切とお示しの御教歌で御座います。

声を枯らしながら御法門を拝見していた清期師を見て、胸が熱くなりました。

本日は、ありがとうございました。今日も、一生分の尊い一日となりました。

ありがとうございます。

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