2007年6月9日土曜日

お祖師さまの「御覚悟」

 佐渡へは時速70キロで海上を走るジェットフォイルを使わせていただいた。久しぶりの海の上。お祖師さまの御妙判を拝見しつつ、新幹線、ジェットフォイルを乗り継いだ。

 お祖師さまの「覚悟」を佐渡流罪前後の御妙判に見出すと身震いがする。 いまは新潟港からこれほど便利に船に乗り、佐渡に渡るのだが、お祖師さまは風雨で佐渡渡海直前に足を止められた。「寺泊」という地から佐渡を遠望し、そこからお手紙を発せられていた。

「今月十月也十日、相州愛京郡依智の郷を起つて武蔵国久目河の宿に付き、十二日を経て越後の国寺泊の津に付きぬ。此れより大海を互りて佐渡の国に至らんと欲するに、順風定まらざれば其の期を知らず。道の間の事は、心も及ぶこと莫く、又筆にも及ばず但だ暗に推し度るべし。又本より存知の上なれば、始めて歎くべきに非ずと之を止む。法華経の第四に云く「而此経者如来現在猶多怨嫉、況滅度後」。第五の巻に云く「一切世間多怨難信」」

 この御妙判の「又筆にも及ばず、但だ暗に推し度るべし」の御文が胸に痛い。新幹線で「パッ」と来るようなことはなく、江ノ島の龍ノ口の刑場から相模川の依智(先年、ここも訪れたが)の屋敷に拘留され、その地で「土篭御書」を認められ翌朝出発された。道中のことは筆舌に尽くしがたい辛さ、苦しさだったことが推し量られる。

 しかし、それも「覚悟」の上。御仏の説かれたとおりではないか、と自問自答を繰り返されていることが、数篇の御妙判から拝察できるのである。 一般の私たちですら苦難・困難が人を育てると知っているが、法華経の行者、御仏からの使命を抱かれたお祖師さまが、清澄の山の上で「南無妙法蓮華経」と高らかに立教開宗を宣言されて久しいが、こうした大難に遭うことがなければ、真に御仏からの使命を帯びた「上行菩薩」としての自覚には至らなかったと教えていただく。そうご自身でお認めになっておられる。

 佐渡御勘気鈔には、

「九月十二日に御勘気を蒙て、今年十月十日佐渡国へまかり候也。本より学文候し事は、佛教をきはめ(究)て佛になり、恩ある人をもたすけ(扶)んと思ふ。佛になる道は必ず身命をすつるほどの事ありてこそ、佛にはなり候らめとをしはからる。既に経文のごとく「悪口罵詈刀杖瓦礫、数数見檳出」と説れて、かゝるめ(目)に値候こそ法華経をよむにて候らめと、いよいよ信心もおこり後生もたのもしく候。死して候はば、必ず各各をもたすけたてまつるべし」

とある。その御覚悟の前に、私たちは一分すらお祖師さまのご信心を推し量れないと恥ずかしく思う。当然だが。

「命限り有り惜む可らず、遂に願ふ可きは佛国也」との結びで、よく御法門でも耳にする御妙判は、佐渡に着かれてから富木入道殿に宛てられた書簡である。 佐渡の気候風雨・寒風の厳しさと、その上での「法悦」「御覚悟」を表明されておられる。

「此比は十一月下旬なれば相州鎌倉に候し時の思には、四節の転変は万国皆同かるべしと存候し処に、此北国佐渡国に下著候て後、二三月は寒風頻に吹て、霜雪更に降ざる時はあれども日の光をば見ることなし。八寒を現身に感ず、人の心は禽獣に同じく主師親を知らず、何に況や佛法の邪正、師の善悪は思もよらざるをや。此等は且く之を置く。去る十月十日に付られ候し入道寺泊より還し候し時、法門を書き遣はし候き。推量候らむ、已に眼前也。佛滅後二千二百余年に月氏、漢土、日本、一閻浮提の内に天親、龍樹内鑑冷然外適時宜云云。天台、伝教は粗釈し給へども之を弘め残せる一大事の秘法を此国に始て之を弘む。日蓮豈に其の人に非ず乎。前相既に顕れぬ。去る正嘉之大地震は前代未聞の大瑞也。神世十二、人王九十代、佛滅後二千二百余年未曽有の大瑞也。神力品に云「於佛滅度後能持是経故、諸佛皆歓喜、現無量神力」等云云。「如来一切所有之法」云云。但此大法弘まり給ならば、爾前迹門の経教は一分も益なかるべし。伝教大師云「日出でて星隠る」云云遵式の記に云「未法の始め西を照す」等云云。法已に顕れぬ前相先代に超過せり。日蓮粗之を勘ふるに是時の然らしむる故也。経に云「有四導師一名上行」云云。又云「悪世末法時能持是経者」。又云「若接須弥擲置他方」云云。又貴辺に申付し一切経の要文、智論の要文、五帖一処に取集られべく候。其外論釈の要文散在あるべからず候。又小僧達談義あるべしと仰らるべく候。流罪の事痛く歎かせ給ふべからず。勧持品に云。不軽品に云。命限り有り惜む可らず、遂に願ふ可きは佛国也云云。文永八年十一月二十三日 日蓮花押」

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