2007年6月12日火曜日

骨董のおじさん

 佐渡から帰ってきて、まだ佐渡島でのことも書けないでいるのに、次々に良いお話がある。
 昨日は佐渡から新幹線で帰ってきて、16時にお寺に着いたのだが、そのまま17時に東京に行かなければならなかったので東海道線に飛び乗って新橋へ。タクシーでホテル・ニューオータニまで行き、帰ってきたのは21時だった。ちょっとだけ疲れた。
 今日からは御講席が5席続く。今夜も事務局会議だ。
 ひろし君が今朝お参詣をされていて、ある女性とのやりとりを話してくれた。彼女はひろし君の昔からの部下であったのだが、うつ病を患い、お寺にお参詣するようになった。懐中御本尊をいただいて、ひろし君がそれこそ大変なサポートをしてあげながら、薄皮をはぐように良くなってくれればと思っていた。その間、清顕師も彼女の自宅まで何度もお助行に行ってくれて、お供水をお届けしたり、電話で励ましたりと続けてきた。
 御法さまは、そんな彼女と周りの努力をご覧になってくださっていた。いつもそうだ。
 メールを転送してもらったのだが、彼女の感じた一つ一つ、そして何よりもひろし君の優しい言葉に私は胸打たれた。彼女の感性が戻ってきたことも嬉しいが、ひろし君の彼女に対する思い、姿勢がありがたい。昔のひろし君からは想像できない。

 ここに、紹介したいと思う。彼女については「○△さん」とさせてもらいたい。また、ひろし君は彼女がまだご信心の言葉を知らないということから、「御法さま」という言葉ではなく「仏さま」などと使って教えていると言っていた。文中にドナーの件が出てくるが、彼女は骨髄バンクに登録しており、彼女と符合する患者さんが見つかったと連絡があったのだが、うつ病の薬を飲んでいることから今回は断念せざるを得なくなった。一度は人のために役に立てると喜んだのだが、ダメになったと聞いて逆にさらに落ち込んでしまっていた。

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ご住職様 清顕師様

 ありがとうございます。本日はお疲れのところ本当にありがとうございました。
 お話をさせていただいた最近の○△とのやりとりです。
 お二人のおかげで、○△はここまで前向きになりました。
 ありがたい。
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>おはようございます。
>私はあれから、なんとか基礎代謝と筋力をあげるべく、生体院(本来は骨盤矯正の所です)に定休日以外毎日通ってます。
> 週2日の掃除のバイトは思った以上に重労働だったので、生体院は無理せず、時々休みながらやろうと思います。
> やり過ぎて息切れをするのが私のダメな所だとよく分かりましたから。

> ひろしさん、あと私先週すごくいい事があったので長文で申し訳ないんですが、読んで下さい。

> 中野の商店街の路地にある狭い広場で、たまに骨董市が開かれるのですが、3月に古くてきれいな手巻きのセイコーの時計を買ったんです(たいした金額ではないです、もちろん。たしか3000円です。ただメンテナンスが高くつきますが。)。
> そして先週の金曜に中野に行ったら、また骨董市が開かれてて、3月に時計を売ってたおじさんがまた同じ場所で時計を売っていたので近付いたら、私の事と、どんな時計が好きなのかまで覚えていてくれて、とても感動しました。

> それから「こんなのいいだろ?」と、また古い手巻きのセイコーの時計を見せてくれたんです。これも数千円だったんですが、この日私は小銭しか持っていなくて…〓。

> 聞いたらその日が最終日で、次回は7月2日~と言うので、おじさんに7月3日は私の誕生日なので、自分にプレゼントしたいから、その日までこの時計を売らないで欲しいとお願いしてみたんです。
> いろいろな場所を回るでしょうから、もちろんダメもとで、です。

> そしたらおじさんは、私の手を取って時計を渡してくれたんです。「信用してるから」って。

> 私は、とにかくびっくりして、嬉しくて、感動して、おじさんに何度も頭を下げて、絶対払いに来る事を約束しながら、泣いてしまいました。

> 2度しか会った事のない私を、「信用してる」なんて言ってくれて、もしかしたら払いに来ない可能性もあるのに、大事な商品を手渡してくれた事を、私はたぶん一生忘れないと思います。

> あと数週間節約して、代金と、おじさんに何かプレゼントしようと思ってます。こんなに自分の誕生日が待ち遠しいのは、数年ぶりです。

> やっぱり私は守られてるんだ、と思い、お題目を唱えました。ただ、感動しすぎて興奮したのか、その日は全然眠れませんでした…

> 長文で本当にすみません。
>
> ○△より
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 ○△へ
 良かったな。そうやって仏様は、お前に少しづつ「人生捨てたもんじゃないよ」って教えてくれているし、○△の言うとおり本当に仏様は、お前をお守りいただいているんだと思う。ありがたいなあ。○△が話してくれたドナーの件があるだろ?

 ○△が人に必要とされる喜びがわかったと言ってくれたよな。この信心は、まさにそれと同じだと思う。さらに骨髄ドナーであれば、人によって合う合わないがあるけど、この教えは誰にでもお伝えできる。

 そして、病気の人、困っている人などを助けてさせていただける。そして何より自分以外の人のために生きることが、どんなに尊くありがたいかを教えていただける。○△がお題目で立ち直り、その経験を同じように苦しんでいる人たちにお伝えできれば多くの人が救われるんだよ。お前にしか、わからない、その病気の苦しさを理解したうえで、たくさんの人を救うことができる。何故、仏様が、お前を助けてくれるか、わかるか?それはね、お題目を唱えるからだけじゃない。仏様が、○△だったら、その苦しみを乗り越えて、たくさんの人たちを救えると思ってらっしゃるからだよ。そして、まだ見ぬ苦しんでいる人たちが○△を待っているんだよ。

 だから、その人たちを救う為に仏様のお力を頂き、早く良くなろうな。お前が人に必要とされる喜びを
わかったのは、おはからいと思うよ。だから俺は、おまえは絶対に大丈夫だと思う。仏様、御法様がお前をしっかり守っていてくださる。俺は○△の話を聞いていて確信した。

 ありがたい。  ひろし拝、
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>ひろしさんのメールを読んで、せっかく型が合ったのに、私が健康でないばかりにドナーになれなかった、白血病の患者さんへの罪悪感でいっぱいだった骨髄バンクのこの経験の意味が、初めて分かりました。

>その後骨髄バンクからドナー保留の手紙が届きましたが、そこには事務局の方から、「ご自身のお体をお大事になさってください」というメッセージがあり、手書きのその言葉に罪悪感がやっと薄れ、本当にみんなが助け合ってる事を実感しました。

>骨董のおじさんとの出会いも、私に人と対話する、関わる事の喜びを与えてくれました。

>おじさんにまで「前見た時より痩せたな」と言われてしまい、今は早く健康になりたいという気持ちでいっぱいです。

>初めてお寺で長松さんに会った時に言われた、「気持ちを内に閉じ込めるな」という言葉も、やっと理解出来てきました。

>▼■さんとの一件がPTSD的になっていて、3月から5月まで掛った区役所とハローワークの手続きが、40代位の男性とやりとりをしていると、涙と手の震えと動悸が止まらなく、本当に心身共に疲れ果てた時期でした。

>でも昨日のひろしさんのメールを何度も読み、辛かった自分の経験を活かす事も出来るし、骨髄バンクの方や骨董のおじさんが私に与えてくれた喜びをいろいろな人に伝える事も出来るという事を知り、また少し前進出来た気がします。

>今は、来月3日の誕生日を目標に、食事と運動と睡眠に気をつけ、早くいろいろな人に会いたいです。(休んで以来、誰にも会ってないんです。手続きが多すぎて実家にも帰ってませんし。)

>ひろしさん、昨日のメール、本当にありがとうございました。

>○△より

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 以上のような内容だった。

 こうして、何の利害関係もない人たちが、お互いに励まし合い、支え合ってくれている。有難いことではないか。骨董のおじさん、本当に有難う。そういう気持ちを社会の中の全ての人が持てたら、何と素晴らしいことだろう。

 ひろし君の「良かったな。そうやって仏様は、お前に少しづつ「人生捨てたもんじゃないよ」って教えてくれている」という言葉。まさに、そうだと思う。

 何度も「サイン」という言葉を使っているように、ご信心をしていて何が一番すごいかといえば、「縁が動く」ということだ。あり得ないタイミングで人と出会い、電話がきたり、声を掛けられたり。道ばたの草花さえも語りかけてくれているような感覚。その言葉や出会いから学べる、感じられる心。それを「ご信心」という心が芽生えた人は養っているのだと思う。

 ありがたいことだ。

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