ラジオ番組の収録のためにアメリカを横断していた。しかし、時間がないことでは日本と同じだった。一つの場所でじっくりと取材をしたり研究したりする時間がなく、次から次へ、東へ東へと移動していかなければ帰国のフライトに間に合わない。メンフィスは素晴らしい街。しかし、味わっている時間はなかった。車に乗り込んで、番組を収録しながら移動していかなければならなかった。
そして、何よりこれからの移動距離はもっとも長い。次に止まるのはワシントンだと決められていた。となれば、その夜は車の中ということで、夕方から朝まで走り続けなければならなかった。西部の乾いた風景から中南部の牧草地帯となり、東側にくれば緑豊かな山々の風景。
問題なのはドライバーだった。免許取り立ての兼子くんは、すでにアリゾナからテキサスの直前道路であやうく事故を起こしそうになったため、この旅の中では免許停止とした(あくまで住職の判断)。この事故未遂、実は彼が悪かったのではなかった。フラフラとお年寄りの車が前に割り込みをしたと思ったら、突然右側のガードレールに衝突。巻き込まれそうになったわけだが、あわや大惨事になるところを何とか無事にやり過ごしたのである。しかし、その時はみんなでホッとして胸を撫で下ろした直後、「隆ちゃん、カルマ的に悪いし、お知らせだと思うので、車の運転は控えた方がいい」となった。現薫師も車の運転をし始めるとスヤスヤ眠る癖があって、寝不足であるとなかなか任せられない。眠るために運転を交代するのだが、ハンドルを握っていない方がドキドキして眠れないのだ。「現薫師、起きている?」と、運転している現薫師に聞くのだから恐ろしい。ウトウトして運転しているわけではないだろうが、「起きてます」と真面目に答える現薫師も現薫師。とても良い思い出だった。そして、夕方から隆ちゃんは車の後ろでスヤスヤと眠る。いや、眠るのを隠そうとしていて、なんだか変な格好で寝ていた。
2007年5月14日月曜日
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